■連載第5回 もうひとりの親指のない男
文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直
これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。
前回までのあらすじ
バーテンダーの三井裕二(みつい ゆうじ)は、客の〝親指のない男〟鈴彰(すずしょう)の悪魔的な魅力にたちまち取り込まれ、ついにその下で働くこととなったのだが......。
「おい、降りろ!」
鈴彰はベンツのエンジンを切った。
「鈴彰会長。ここで、なにをするんですか」
鈴彰は好きだが、オレは♂ホモではない。
「オマエ、なにいってんだ。このラブホは、オレが借金のカタに押さえた物件だ。遊ばせておくのももったいないので、ウチの事務所に使っている」
「あぁ、そうなんですか」
オレは、ホッとためいきをついた。
……続きは…